50代後半で金融機関を退職、企業年金分野で起業した小熊賢さんの挑戦

50代後半で金融機関を退職、企業年金分野で起業した小熊健さんの挑戦 シニア起業家紹介

はじめに

「日本はオワコンだよね」—子どものその一言が、30年のサラリーマン人生を見つめ直すきっかけとなった小熊賢さん。還暦を前に、0.5坪のオフィスから自分と日本の未来を変える挑戦を始められました。企業年金分野での豊富な専門知識を活かし、課題解決型の事業を展開する小熊さんに、起業ストーリーとシニア起業家ならではの視点をお聞きしました。

起業ストーリー:「課題解決」への強い使命感

子どもの一言が変えた人生観

小熊さんの起業への転機となったのは、子どもの「日本はオワコンだよね」という一言でした。「社会人として数十年精一杯仕事を続けてきたつもりだったが、立ち止まって世の中を見渡すと、将来に希望を見出しづらい現状がある」と振り返ります。

この現状に至ったのは「社会人として数十年生きてきた自分にも責任の一端がある」と感じ、「目の前にある課題は、それに気づいた人が取り組むべき」という強い使命感が起業の原動力となりました。

なぜ年金分野を選んだのか

日本には山積する課題がある中で、なぜ年金分野を選んだのでしょうか。小熊さんは「年金問題、言い換えると老後不安は、消費マインドの低下、チャレンジ精神の減退、結婚や子育ての敬遠といった社会・経済の縮小スパイラルの遠因となっている」と分析します。

年金制度への信頼が増し、老後生活がより安心なものとなれば、日本の社会・経済は再活性化できる」—これが小熊さんの事業ビジョンです。

事業内容と価値提案:企業年金の課題解決に特化

発見した二つの大きな課題

小熊さんが着目したのは、企業年金分野における以下の課題です:

  1. 既存の企業年金の運営効率化の余地
    • 多額の資産を運営・管理するという重責を担っているが、十分な体制を築けていないところが多いのではないか。
    • 特に資産運用の専門人材の確保に課題があるのではないか。
  2. 企業年金制度の普及率の低さ
    • 企業年金制度を実施している企業は約2割のみ。
    • 特に中小企業の多くは未実施の状態。

実地調査で見えた真の課題

当初は主に運用人材の紹介を考えていた小熊さんでしたが、都内の企業年金基金に飛び込み訪問を行う中で「実は困っているのはこっちだ」という声を聞きます。

運用以前の問題として、加入者管理や年金支払いといった基本的な実務を数人で実施している企業年金基金が多く、ベテラン職員が退職すると翌日から業務が回らなくなるという深刻な状況が判明しました。

現在のサービス内容

  • 年金実務人材の紹介・マッチング
    • 企業年金基金の実務経験者と求人基金のマッチング
    • (年金の専門人材の紹介・マッチングに加えて)
  • 将来構想:年金BPOサービス
    • マッチングの限界を見据え、企業年金実務のアウトソーシングでの受託を検討
    • 自社で実務経験者を抱え、継続的なサービス提供を目指す

起業の現実:一人起業の壁と新しい学び

最大の課題は「一人起業のボトルネック」

「一人起業では『ボトルネックになるのは自分だけ』」と小熊さんは語ります。会社員時代は社内調整や決裁などで時間がかかっていましたが、今は自分が決めて動けば良い分、すべてが自分次第になってしまいます。

ホームページの作成や確定申告など、本業以外の業務に時間を取られることも大きな課題として挙げています。

起業準備の反省点

「構想はあったが、会社を辞める前にもっと準備をしておくべきだった」と振り返る小熊さん。マーケット検証や見込み客獲得ができていなかったため、起業後の売上確保には依然苦労していると語ります。

資金調達と事業展開

現在は自己資金での運営ですが、将来的にBPOサービスを本格展開する際は資金調達の必要性も検討されています。さらにその先には、「年金×AI」といった新たなサービスの開発にも期待を寄せています。

デジタル活用術:ChatGPTを「アシスタント」として活用

AI技術の積極活用

小熊さんのAI活用は実践的で効果的です。ChatGPTを「アシスタント」として位置づけ、以下のような業務で活用されています:

  • 具体的な活用事例
    • 事業運営全般に関する相談・壁打ち
    • 提案資料のドラフトの作成
    • プレゼン資料の要約の作成
    • 契約書のチェック
    • 確定申告などの手続きに関する照会

学習方法とアドバイス

AI学習については「もっと体系的に勉強したい」とさらなる向上を目指されています。現在はAI関連書籍やYouTubeなどで知識を習得されています。

「ビジネス自体にAIを組み込んでいきたい」という展望から、「年金×AI」サービスの開発も視野に入れています。

LinkedInの活用:4000名とのネットワーク構築

驚異的なネットワーキング力

小熊さんの最も特徴的な取り組みがLinkedInなどを活用したネットワーキング戦略です。現在、LinkedIn上だけで、既に4000名以上と繋がりを持たれています。

  • 継続的アプローチ
    • 週1回、金曜日の定期投稿
    • 「新聞コラムをもらった気持ち」での投稿作成
    • 今現在のビジネスとの関係にこだわらず、幅広いネットワーキングを意識

投稿効果と反響

投稿には毎回多数のいいねとコメントが寄せられ、「自分の考えに共感してもらうコメントをいただけることが本当にありがたく、励みになる」と語ります。投稿を通じて企業からの相談も獲得されています。

将来のチーム作りへの布石

これらの発信は「将来組織を作っていく時に、こういう考え方を理解してもらった人に入ってきてほしい」という長期的な視点も含んでいます。

今後の展望とメッセージ

ワークライフバランスへの新しい取り組み

小熊さんは「これからやりたい100のこと」リストを作成し、定期的にアップデートされています。仕事だけでなく、残りの人生で実現したいことを明確化し、大阪万博訪問など、プライベートも充実させています。

求める仲間とパートナーシップ

  • 最も求めているのは創業メンバー 「一緒に働いてくれる仲間、同じ志を持った創業メンバーを見つけたい」
  • 若手人材の必要性 継続的なサービス提供のためには若い人材が不可欠。「次のCEO候補」として若手との協業を強く望んでいます。

同世代へのメッセージ

「還暦が近づくと悠々自適という方が多いが、次世代にどうつないでいくのかということに対して貢献をしたい」

「シニアにしかわからない課題がある。まだまだ社会に貢献することはある」

特にtoB(企業向け)の課題については、「若者はtoC(消費者)としての経験はあるが、toBの経験は乏しいため、そこの課題になかなか気づきづらい」として、シニア起業家の強みを強調されています。

まとめ

小熊賢さんの起業ストーリーは、シニア世代の豊富な専門知識と社会課題への責任感、そして最新デジタル技術を駆使した現代的なビジネス手法が見事に融合した事例です。

特に印象的なのは、飛び込み営業による課題発見力と、LinkedInでの戦略的ネットワーキング、そして「年金×AI」という未来志向のビジョンです。一人起業の限界を認識しながらも、次世代との協業による事業拡大を模索する姿勢は、多くのシニア起業家にとって参考になるでしょう。

「目の前にある課題は、それに気づいた人が取り組むべき」という小熊さんの言葉は、シニア世代が持つ豊富な経験と社会への責任感を活かした起業の価値を物語っています。

小熊賢さん プロフィール

  • 事業内容: 企業年金コンサルティング・企業年金人材の紹介(株式会社 珊瑚プラットフォームズ 代表)
  • 専門分野: 企業年金分野の業務支援
  • 経歴: 金融機関で長年企業年金業務に従事
  • ウェブサイト: https://sangoplatforms.com/
  • LinkedIn: https://www.linkedin.com/in/masaru-oguma/

連絡先・協業希望

企業年金に関する課題をお持ちの企業、年金実務経験者、志を同じくする創業メンバー候補の方は、ウェブサイトまたはLinkedInからお気軽にコンタクトください。

シニア起業研究所

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